もうひとつの相棒
- 小河 幸代
- 2021年2月12日
- 読了時間: 2分

糸はかせという輪っか状態になっていて、この状態で精練したり染めたりします。実際に織る段階になって一本の糸として扱うときに、かせから糸を木枠という木の枠に巻き取るわけです。その巻き取るための道具、座繰器”ざぐりき”(または繰返器)写真では左側。私の中では糸巻きと呼んでいます。ちなみに右側はかせをかけておく ふわりという道具です。
野趣あふれる糸を好んで使ってきましたので、細くてふしや太すぎる部分のある糸を扱う場合に、織りたいもののイメージに合わない、あるいは使えない部分を取り除いていくことが多かったのです。糸一本を指の感触の中で追いながら違和感を感じた時に、巻き取りをやめてその部分を切り取り、結んで繋げて、また巻き取っていきます。
とっても長く糸と向き合いながらの時間を過ごしますが、この糸巻きがおもしろい動きをして伴走してくれます。手前の棒を回転させると、歯車が連動して木枠の巻き取りの糸を左右に振って、木枠に巻き取られていきます。このため糸の初めが迷子になりづらいのです。
そして木と竹で工夫して作られた姿にも、道具の形の美しさは眺めていていつまでも飽きません。
織機の前に座る時間より、この糸巻きで糸繰りしている時間の方がずっと長かったのです。
もともとは繭から生糸を引きながら巻き取る道具だと思います。古道具屋さんで見つけたもので動かすとガタガタとしました。部品が入っていた台座の穴に、裏からくさびを打ってガタつきを直して、使えるようになりました。古いものの中に使える道具が見つかることが嬉しかったのと、自分で手直しが出来るのも良いことです。
糸を巻き取るところに金属製のお太鼓と呼ばれる道具をつけたら、繭からの糸引きにも使えるはずです。赤城のふし糸を引くおばあちゃんの元を見学に行かせて頂いた時に、これに似た道具がありました。モロコシぼうきという道具を手にいくつかの蚕からさっと糸口を拾って、片方の手でくるくると糸繰り器を回しながら糸引き作業。いつかやってみたいと憧れました。
長い年月を経た道具は使うほど美しくなり、作った人と使ってきた人の工夫が見える時があり、より愛着が湧いてしまいますね。
ずっと使い続けたい道具のひとつです。
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